Humanities and Social Sciences Researchers

言語はどのように概念を捉えるのか

人文社会科学

言語習得メカニズムの探求

 私は主に心理言語学と語用論の2つの領域を研究しています。心理言語学とは、心理と学習・習得を含めた言語発達を取り扱う学問のことを指します。私はその中でも、何歳から言語的な特徴が表れるのかについてや、言語間の差異を見分ける比較研究、第一言語の習得から第二言語習得への言語転移、慣用法に基づいた理論を主な専門分野としています。
 文法に則ってどのように言語が使用されているかを研究する語用論においては、言語の使用状況や使用者、伝達媒体(話す・聞く・読む・書く)などの要素を考慮する必要があります。その中で、私はポライトネス理論とその実践に関する研究や、話すときの立ち振る舞い・ユーモア等に関する異文化間交流と、異文化間での感受性の発達に関する研究などを行っています。
 その中でも最近特に注力しているのは、心理言語学の分野において言語がどのようにして時間・空間を概念化するのかを明らかにするものです。英語の約10%が前置詞で構成されているのにもかかわらず、学生が前置詞の使用に関して非常に困難を感じていることをきっかけに、私はCISD(Crosslinguistic Image Schema Differential、異言語間のイメージスキーマの差異)仮説を発展させる研究に注力しています。イメージスキーマとは、「表面」や「容器」といった、私たちの行動や知覚、概念の中にくり返し現れるパターンや形、規則性から抽出される抽象的・一般的な認知の図式を表すものを指します。CISD仮説では、言語間におけるこのイメージスキーマの差異を比較します。

CISDの構造を表した図式

多言語習得の鍵「イメージスキーマ」

 国際化が進む現代社会において、人々が交流する際には多くの言語を使い分けなければなりません。そのため、第二、第三言語の効率的な学習・使用方法を知ることがより重要視されています。多言語を使いこなし、さまざまな文化の壁をこえて活動できる人材が社会に必要とされているのです。
 言語心理学においても、多言語使用の研究が注目されています。「言語の学習に最適なタイミングはいつなのか?」「継続的な同時進行での言語学習にはどのような効果があるのか?」「言語学習の順序は習得に影響するのか?」といった研究テーマを解明するため、多数の研究領域において調査を進める必要性があります。
 私の取り扱うCISD仮説を発展させることで、言語間の認識の違いを分析することが可能となるでしょう。そして、この研究は第二言語習得の際の前置詞の教育方法の改善にもつながります。学習者の多くは視覚的学習者であるため、言語の使用場面のイメージを図式にし、それを言語の壁を越えてイメージスキーマにつなげることが学習を援助すると考えられるためです。

研究の協働と他分野への成果還元

 広島大学大学院人間社会科学研究科での他分野との共同研究の成果を通して、他分野ならではの視点から、従来では注目されなかったような観点を発見し、調査を進めることができるかもしれません。
例えば、言語心理学と異文化コミュニケーション学や組織行動学をかけ合わせ、理論を我々の日常会話のような実践にあてはめることができます。他分野との共同での研究アプローチを言語心理学の分野で行うことで、人間社会科学研究科での共同研究に多くの利益を得られるでしょう。
 人間社会科学研究科へ入学を希望する学生の方についても、様々な観点から自身の研究分野を見つめるきっかけとして、このサイトに紹介されている研究記事をみていただきたいです。自身のテーマを研究する一方で、その取り組みが人間社会科学研究科の他分野の学生にどのような影響を与えるかを考慮する、良い機会となると思います。